目元は「大きく開く」のではなく「ゆるめる」

「目を大きく」「目をぱっちりと」——撮影中によく言われる声かけです。指示通りにまぶたを引き上げると、目尻に力が集中して、驚いたような表情になります。目は大きくなった気がしても、自然さが失われます。

本当に必要なのは、目を大きく開くことではなく、目尻をゆるめることです。力が抜けた状態の目元は、落ち着いて見え、口元の表情とそろいやすくなります。目を「開く」より「整える」感覚です。

目尻を緩める練習は、目を小さくするためのものではありません。力を入れて見開いた状態から、自然に見る状態へ戻すための練習です。

カメラ前で目尻に力が入る仕組み

カメラを向けられると、人は無意識にまぶたを開こうとします。「自分をちゃんと見せたい」という気持ちが、目を大きく見せる動きにつながります。すると、まぶたの上部が引き上げられ、目尻に力が集中します。

目尻に力が入ると、口元は笑っていても目元だけが固く見えることがあります。口元と目元の温度差が、写真に違和感を残します。力を入れて目を開くことが、かえって不自然な表情を作る仕組みです。

緊張で呼吸が浅くなると、この力みはさらに強くなります。目元だけを直そうとしても、呼吸が浅いままだとすぐに戻ります。だから、目尻を緩めるには、目元だけでなく呼吸と肩も一緒に整える必要があります。

FIG. 151目尻の力を抜き、緊張した目元を整えるための教育用図解。

5つの動きで目元を戻す手順

5つの動きで目元を整えます。①目を閉じる。②薄く開ける。③遠くを見る。④息を吐く。⑤レンズへ戻る。それぞれは数秒で済む小さな動きです。

特に大切なのは③の「遠くを一度見る」ことです。近くのカメラを見続けると、目に力が集中しやすくなります。一度視線を遠くへ外すと、目周辺の筋肉がゆるみます。窓の外・壁の遠い場所・部屋の奥など、現場で見える遠い点に視線を移します。

④の「息を吐く」も忘れがちですが効果的です。息を止めたまま目元を直そうとしても、力は抜けません。長めに息を吐くと、肩が自然に下がり、目元の力も抜けます。

目元だけを直そうとすると失敗する理由

目元だけを直そうとすると、なかなかうまくいきません。「目を大きく」と言われて、まぶたを上へ引き上げる動きが習慣になっていると、すぐに同じ状態に戻ります。目尻の力を抜くには、体全体の力みをほどく必要があります。

息が止まっていたり、肩が上がっていたりすると、目尻の力も抜けにくくなります。撮影中に目元を整えるときは、まず息を吐いて肩を落とすところから始めます。これが先で、目元はその後の調整です。

「目元だけ何とかしよう」と意識が集中するほど、目に力が集まります。逆に、肩と呼吸を意識すると、目元の力が自然に抜けます。

目元は大きく開くより、目尻をゆるめて落ち着かせます。

練習と撮影での確認手順

練習では、目を閉じて一度息を吐きます。次に、まぶたを薄く開けて、遠くの壁や窓を見ます。そのまま肩を少し落とし、もう一度息を吐きます。最後に、レンズへ目線を戻します。最初はゆっくり、慣れたら短く——30秒程度でできるようになります。

撮影中に目元が固くなったと感じたら、この5つの動きを短く入れます。カメラマンに「少し休めますか」と一声かけて、自分のペースで戻します。練習を日常的にしておくと、現場での切り替えが早くなります。

写真選びでは、目元だけを拡大して見ます。目尻に力が入りすぎず、口元の表情とそろっている一枚を残します。力みのない目元の写真は、見る人が「自然に見られる」状態になります。

  1. 目元は大きく開くより、目尻の力を抜いて整えます。「目を大きく」の指示はまぶたに力が集まりがちです。
  2. 目を閉じる・薄く開ける・遠くを見る・息を吐く・レンズへ戻るの5つの動きで目元を戻せます。
  3. 目元だけを直そうとせず、肩と呼吸も一緒に整えると、目尻の力が抜けやすくなります。

参考資料

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